Interview

【コクヨ_ソナエル】事業家 × デザイナーのコンビで防災市場を変革する

【コクヨ_ソナエル】事業家 × デザイナーのコンビで防災市場を変革する

文房具で有名なコクヨ株式会社が提供する防災ソリューション「ソナエル」のブランド立ち上げの物語。立ち上げの背景には、オフィスの防災環境を知り尽くした事業家とデザイナーの名コンビの活躍がありました。既存の防災事業・市場の変革に挑んだチャレンジのストーリーについて、その立役者である2人に取材しました。

「事業立ち上げ人」と「何でも屋デザイナー」コンビ

―まずはお二人のキャリアについてお聞きしたいと思います。コクヨに入社してから経験してきた業務について教えてください。

酒井:私は2006年にコクヨに入社して、初めは文房具事業の営業配属になりました。当時は直販営業部隊がありまして、そこで1年半くらい法人のお客様を担当させてもらいました。

―どんな提案活動をしていたんですか?

酒井:
文房具がメインなので、企業の総務関連部署に通っていました。

当時は新入社員なので、年上の総務担当の方と話せる話題とかもなかったんですよね。そこで、出身地の話から「阪神淡路大震災の時ってこうだったんですよ」みたいな流れで「防災関連で相談にのってほしい」って依頼をもらうようになりまして。

―当時はコクヨの中に防災関連の事業ってなかったですよね?

酒井:事業としては存在していなかったんですけど、社内のツテを探って仕入れルートを調べて、防災用品を売ってたんです。そして後々、全社で防災事業が立ち上がった時に「立ち上がる前からなぜか防災用品売ってるやつがいるぞ」とのことで、そのまま防災事業部に配属になりまして(笑)。

―すごい経緯ですね。当時まだ2年目社員くらいの頃ですよね?

酒井:そうです、2007年くらいからですね。そういった経緯で事業立ち上げの頃からずっと関わり続けていて、そのままずっと防災事業に携わっています。

―立ち上げからどのような働き方をされてきましたか?

酒井:特に最初は大企業とは思えないくらいベンチャー感がすごかったです。

既存事業は当然ながらある程度機能分担はされているんですけど、防災事業では人手も足りなかったこともあり、リサーチをして、商品企画をして、物流を構築して、営業もする、っていう一気通貫でいろんな仕事に関わりましたね。

―岡田さんの経歴も教えてください。

岡田:
私は2014年の中途入社です。最初は企画開発職で入社して、今はデザインが主な仕事ですね。具体的には、商品や販促物、プロモーション周辺のデザインを担当しています。今回の取材でフォーカスを当てていただく「ソナエル」については、ブランドの世界観作りから携わっています。

―中途入社される以前はどのような仕事に関わっていたんですか?

岡田:もともとはデザイン事務所にいて、その後に町工場で職人みたいなことをやって、建築事務所で働いて、その後メーカー2社を経験してからのコクヨなんですよ。

―すごい経験ですね。自分の手で何でも出来てしまいますね。

岡田:品質試験や製造から生産ライン立ち上げまで出来るデザイナーはなかなかいないんじゃないかな、とは思っていますね。過去に本当にいろんな現場で働いてきて、その中で実際に手を動かす中で手触り感を持って学んでこれた部分は、経験として大きかったと思います。

―岡田さんみたいな方がチーム内にいると心強いですね!

酒井:本当にそうですね。

岡田:酒井とは得意なことと役割分担が綺麗に分かれているので、ちょうど良くハマっている感じはありますね。

積み上げたブランド力との掛け合わせで新カテゴリを創出

―どのような経緯で防災事業の中から新ブランド「ソナエル」を立ち上げることになったのかについて教えていただけますでしょうか?

酒井:防災事業を立ち上げて7年くらい経ったタイミングで、やっぱり時間の経過と組織規模拡大が起因して「最近新しい動きがなくなってきたよね」っていうことを感じていまして。

「ここらのタイミングでこの事業をゼロから考えたらどうなるんだろう」っていう構想を、岡田と2人で学生時代に例えるなら放課後の自習的に考えてたんです。それで事業計画まで固めて「2人グループでやらせてくれ」っていう提案をしたところから始まりました。

―完全に与えられてもないミッションですよね。事業の未来に対しても課題感を感じていたんですか?

酒井:課題感というよりも「単純につまらなくなってきた」というか。立ち上げからずっとベンチャー感を持ちながら、常に新しいことをガチャガチャやってきていたので。そこで「本当につまらないのか、もしくは、まだまだほじくれてないだけなのか」っていうのを真面目に考えてみよう、という思いでした。

岡田:当時はロケットに例えて話してましたね。ある程度の売り上げも立ってきて、社内でも認知されるようになったけど「今のロケットのままじゃ大気圏から出て宇宙に行けない」ということは見えてまして。

じゃあ「2段目のロケットを仕込まないと、その先は確実にないよね」と。そもそも2段目が存在するのかすら全く見えてなかったんですけど、それがないとつまらないので、1段目ロケットに乗りながら2段目設計も始めた、みたいなイメージです。

―なるほど。大企業の組織の中で、お二人とも良い意味で異質ですね。

酒井:社内では変態ってよく言われる(笑)。

ただ、自分たちが置かれていた環境がハッピーだったのかな、と思ってまして。コクヨは100年以上も続いてる会社なので「防災事業なんて全社の規模でいうと小さいし、何をしてもあまり影響が出ないだろう」っていうような、ある種の安心感がありました。そういった意味で勇気を持てたので、非常にチャレンジしやすい環境だったな、と。

―どういった着眼点で新ブランドの勝機を見出したんですか?

岡田:当時って防災専業メーカーもなければ、防災という市場もちゃんと存在していなくて「キャンプ用品や建築資材の中から使えそうなものをかき集めてきて提案する」っていうのが防災事業だったんです。

防災用品に対するイメージも、避難所の備蓄みたいな「THE・防災」っていう印象で「それをオフィスにそのまま持ってくるだけでいいのか」って部分にすごく疑問があったんです。幅広く防災の括りで戦うとコモディティ化で疲弊してしまう、という課題感もありました。

その時に我々が考えたのが「場所をオフィスに絞って、しっかり世界観も作り込んで、啓蒙もセットで ”オフィス防災” って打ち出したら、新しい市場を作れるんじゃないか」ということでした。

―新カテゴリーを創出してしまう戦略ですね。

酒井:言ったもん勝ちみたいなところはあったよね。

岡田:定義してしまえばいいんですよね。コクヨはオフィスのプロという認知もあったので「オフィスのプロが防災を考えたらこういう世界が見えたよ」っていうメッセージで。

―コクヨブランドという強いアセットも上手く組み合わせたんですね。

酒井:競合の防災事業者は企業の名前からして「●●防災」みたいに分かりやすい認知が取れている中で、違う形で勝負に勝つにはどうしたらいいんだろう、と考えた結果でそうなりましたね。

「既存事業の変革」も見据えた緻密な出口設計

―改めてのお二人から「ソナエル」事業についてご紹介をお願いします。

酒井:ただの防災ではなくて「はたらくに よりそう 防災のかたち」というコンセプトです。

防災はずっと続けるものであるからこそ、商品ラインナップ・サービス・コミュニケーションの全てにおいて、少しずつ無駄は減らしながら継続して工夫を重ねていくことを大事にしています。従来は単なる災害対策という文脈だったのですが「防災は当たり前のもので、その当たり前の風紀を守っていこう」というのが、この事業のメッセージです。

―哲学と想いが込もっていますね。

酒井:ただ防災用品を買っていただくのではなくて、導入時のプランニングはもちろん「購入してもらった後もずっと永く付き合っていくようなパートナーとして選んでいただきたい」という思いがありますね。メーカーとしてモノを売ることでマネタイズはするのですが、基本的にはお客様とのそういった関係性を作る部分に重きを置いて事業を運営しています。

―提案段階からモノ売りではなくコンサルティング的にアプローチするイメージでしょうか?

酒井:そうです。防災用品の面白いところが「基本的には使わないプロダクト」なので、「使い勝手がいいんです」って言われてもイメージが湧かなくて、他の商材と違って商品機能を訴求することにあまり意味がないんですよね。他方でお客さんは何を望んでるかっていうと、相手が災害なので、何を揃えればいいかなんで結局は確証を得る方法がないので、決めるための拠り所を探されています。

だから私たちは会話の中で、根拠のある理由と一緒に提案して背中を押すイメージでいます。その部分の価値に対して対価を払っていただいてると思っています。

―今までの防災事業で積み上げてきた知見も活きていそうですね。

岡田:そうですね。もともと酒井が「差別化が難しいプロダクトをどうやって売るか」っていう試行錯誤をずっとやってましたからね。

それを私がストーリーとして並べて、埋めて、修飾語を付けて、美しく整えた事業が「ソナエル」であって。事業の根幹としては「どうやったらお客さんに買ってもらえるか」っていうことを悪戦苦闘しながらやってきた積み上げがあってこそだと思います。

―過去の積み上げのもとに花開いた事業なのですね。世界観もとても素敵だと思うのですが、どんなプロセスで詰めていったんですか?

酒井:デザイン・コンセプト・フィロソフィー等の設計は完全に岡田の力ですね。私は岡田が考える世界観がより理解を得られるように、出来るだけ自由に考えてもらえるように、ひたすら社内での調整をやってました。

―コンビネーションが素晴らしいですね!

岡田:「ソナエル」の構想については、ビジネスが分かっている酒井と、また違った視点を持っている外部のデザインパートナーとの3人で話しながら詰めてくる中で「デザインとビジネスは切り離すことが出来ず、事業全体を1つのストーリーとして捉えたものを落とし込んでいかないと意味がない」ということを学べて、視座が上がったと思っています。

―事業的な側面での立ち上げプロセスも具体的に聞いていきたいと思いますが、顧客ニーズの検証はどのように進めていったんですか?

酒井:それまで防災事業を運営してくる中で、全国津々浦々、官公庁も民間も、大企業から中小企業まで、4,000人くらいの防災担当者に直接会ってるんですよ。

コクヨのビジネスとして、基本的に家具や文房具は販売代理店さんに売っていただくのですが、その代理店さんも防災用品は専門外ないので、私たちを呼んでくれる。そういう意味で圧倒的なマーケティングデータは蓄積されていました。

―なるほど。すでに顧客解像度も高くて、課題も明確に掴んでいたのでブレなかった?

酒井:そうですね。迷うことはなかったです。

―逆に立ち上げの中で大変だったエピソードはありますか?

岡田:デザイナー視点で話しますと、どれだけ素晴らしいビジネスでも、文字や言葉だけではなかなか伝わらないと思っていまして。そこをビジュアルにしていく過程はすごく苦労しました。

「ソナエル」はありがたいことにグッドデザイン賞もいただいたのですが「外部の偉いデザイナーではなく、社内の現場から考えたデザインで賞も穫れた」というのは嬉しかったですね。デザインという意味では、そこでやっと市民権を得ることが出来た、という気持ちがあります。

酒井:私の場合は、この「ソナエル」という新規事業自体の「社内的な認知」と「認知後の整合・ポジショニング」の2点ですね。

まず認知の話でいくと、やっぱり人間って、知らないことに対しては、フラットな感情ではなく、ややマイナスのほうに働くと思うんですよ。「あいつら何してるか分かんない」っていうのは、その時点で印象がネガティブなんですよね。

―市民権を得るための啓蒙活動にも尽力をした?

酒井:そうなんです。社内に自分たちの存在や価値をアピールしていくことは大事なんですけど、その認知が進んできて「あれ面白いな」って思われると、今度は干渉されます。既存事業のカラーが強くなった新規事業はポジショニングがすごい難しいと感じています。

完全に飲まれちゃうとそもそも新規事業ではない形になってくるので、ちゃんと関心は引いて「あいつらそれなりにイケてるよね」って思わせつつ、独立性はしっかり担保する、というポジション取り。

「社内ブランディング」っていう言葉で終わる話かもしれないですが、同じ会社でも色んな事業や色んな立場、感じ方の人がいますから、その人ごとに合わせて文脈や言い方を変えるとか、今も常に工夫してますね。

岡田:彼は本当にロビイストなんですよ(笑)。

―既存事業に対して、具体的にはどんな働きかけを行ったんですか?

酒井:私たちの事業部内だと営業リソースが潤沢ではないので、事業拡大しようとすると、既存の文房具か家具の営業マンに防災用具を売ってもらわなきゃいけない。普通に考えると彼らにとってはただの異物なんですが「そこを繋ぐストーリーをどう作っていくか」について工夫しまして。

扱っている商材は違えど、会いたいお客様に会える、いつもお世話になっているお客様により喜ばれることは営業マンの重要な役割です。そこをヒントに「会える、喜ばれる防災用品」としての展開を進めていきました。

―社内認知はどのように獲得していったんですか?

酒井:先ほどの話題にもあったとおり 「知られてない」ってことはすごくネガティブに働くので、それはもう「見境なく顔を売る」に限ります。仕事のような仕事じゃないようなテーマでもどんどん絡んでいって、いろんな人とコミュニケーションを取るというか(笑)。

「あいつとはあれを一緒にやったことがある」みたいな関係性の味方をどんどん増やしていきました。それらしく言いましたが、7割くらいは個人的に好きでやってます(笑)。

―ポジショニング問題もよく聞く課題の1つなので、企業内新規事業の推進においてとても参考になるお話です。

酒井:「潰さないでください」なんて直接言おうものなら、自分たちがやりたいことを続けたいだけに捉えられてしまうじゃないですか。だから、その気持ちをどう表現し伝えるか、ってすごい悩みましたね。

岡田:インナーセールスですよね。少なくとも「僕たちはすごい、最先端だ」みたいな気持ちはさらさらないので、お互いハッピーな道を見つける工夫をしながら、常に会話のネタのようにじわじわと発信してましたね。

―リリースからの事業的な意味での立ち上げも順調に進んだんですか?

酒井:防災用品は特性上、市場に出してすぐ売れる商品ではないので、劇的に立ち上がったかというと全然でしたが、製品発表のやり方も大きく刷新したりしたので、当初から「面白そう」という前向きな声は拾えていました。

岡田:具体的なエピソードとして、問い合わせフォームのフリーコメント欄ですごく熱量の込もったメッセージが来るようになったんです。普通はチェックボックスで「カタログが欲しい」とか選んで、わざわざコメントなんて書かないじゃないですか。

ブランドを作るにあたって「フィロソフィーにどれだけ共感を得られるか」を大事にしてきたので、その反響は涙が出そうなほど嬉しくて、手応えも感じることが出来ましたね。

―2019年7月からはファニチャー事業本部での活動を始められていますが、これは既存事業部門からもシナジーが認められた結果でしょうか?

酒井:そうだと思っています。コクヨとして今最も注力している家具・空間の事業の一員になったのは、「 ”働き方を作っていく” っていう文脈のパーツとして必要だ」ということだと思います。

―防災フックで家具の提案が出来たりもしそうですよね?

酒井:まさしくそういった効果もあると思っています。「家具も防災も売る」ではなくて「オフィス空間での防災を考え、提案する」ことで、どちらの売上にも貢献できるような新しい展開が出来ると思っています。

―企業内新規事業のEXITとして非常に綺麗な形ですね。この出口は立ち上げ段階から設計してたんですか?

酒井:これは設計してました。岡田と事業の再構想を始めたころ、現社長がファニチャー事業の責任者だったのですが、当時の役員会に飛び込みで出席させていただいて「この事業は文房具ではなく家具・空間事業の中で扱うべきです」と主張したことがあったんです。今思うと、結構サラリーマン人生掛けたな、って思うんですけど(笑)。

そこから、社長には何度も時間を作ってもらって、いまの出口も含めた設計の壁打ちをさせてもらっていました。そのときの感謝の思いがあったからこそここまで走ってこれましたね。

―お二人としては今後の事業でどんなことにチャレンジしていきたいですか?

酒井:これまでは事業部のリソースも少なかったこともあり、属人的にやってた仕事も多かったのですが、次のステージとして「自分がいないソナエル事業をどんな形で設計していこうか」ということを考えていきたいです。

岡田:これだけ世の中に受け入れられ始めた「オフィス防災」をビジネスとして持続的に発展させていくことが大切だと思っています。

そのためにも、我々の事業だけで考えるのではなく、賛同してくれるパートナーも巻き込んでいって「オフィス防災システム」というインフラ・社会通念みたいなレベルまで昇華させていきたいですね。

社内起業家としての働き方

―「社内起業家としての働き方」についても伺いたく思いますが、社内新規事業だからこそのメリット・デメリットについて教えていただきたいです。

酒井:
私としては、良くも悪くも「●●事業部畑」みたいなものに入ってなかったので、慣例やルールには縛られずフラットに考えることが出来て、それが個の会社員としてはすごく幸せでしたね。社内で新規事業をやってたからこそ、事業部の垣根なく、多くの人と知り合えましたからね。

あとは前例がない仕事ばっかりだったので「仕事のやり方を作る」という経験が出来たのはとても大きかったと思ってます。

―岡田さんはいかがでしょうか?

岡田:社内新規事業だからこその難しいはずのポイントは、ほとんど酒井が取り除いてしまったので、デメリットを感じたことはないですね。逆に豊富なアセットがある大企業の新規事業だからこそ、事業の垂直立ち上げが出来たと思います。

あとはデザイナーのキャリアとしても、インハウスの限定された領域のプロではなく、新規事業という小さい単位で事業全体を見通しながらやれたことで、視座が上がったことも非常に大きい経験だったと思います。

―お二人から見て、社内起業に向いている人のマインドセットをどう考えていますか?

酒井:前向き、ですね!

岡田:とにかく楽しむ、です!

酒井:たぶん二人ともポジティブなのか分からないですけど、ボロクソに言われた方が前向きになるタイプで(笑)。社内で厳しい意見を言われることもたくさんありますが、そういう人ほどそれに応えると必ず仲間になってくれるということも分かったので、とにかく前向きにやってこれたと思います。

―事業開発の経験も実績も積んできた中で、個人としての将来的なキャリアビジョンはどう設計されていますか?

岡田:自分はデザイナーなので、定期的にポートフォリオをまとめることで「自分が今どこにいるか」ってことを明確にして可視化しています。新規事業に関わって事業全体を見て動く経験をしたことで、出来ることの幅は広がったと思っているのですが、自分はその中でも明確にデザイナーという役割を意識しています。

今後については、この事業をもっと大きくしていくのもそうだし、その時々で面白そうなことをやるだけだと思っています。

酒井:あまり明確には考えてないんですけど、1つだけあって、それは仕事をするのがめちゃくちゃ好きなんですよ。高校生の時からバイトがすごい楽しかったみたいな人間で。社会人として働くのもすごく楽しみにしてて、入ったらやっぱり楽しくて。だから、定年を理由に働けなくなることはなんとかしたいですね。

そう考えると、会社を辞めて起業するとか、定年まで働いてから自分でなんか仕事を見つけるとか、色々と選択肢はあると思うんですけど。今の自分が発揮出来てる力が10あるうちの8か9くらいはコクヨという会社に依存していて、残りの少ない部分だけが私のビジネスパーソンとしての本当の実力だと思ってるので、それを客観的に把握しながら、会社に依存しないスキルをコツコツ溜めていきたいですね。

岡田:仕事辞めたくないですもんね。年齢っていう軸で仕事ができなくなるなんて「絶対イヤだ」って思ってます。
いつまでも暑苦しい、面倒くさいおじさんでありたいなと(笑)。

社内起業家へのメッセージ

―最後に、日々奮闘している社内起業家の方々、新規事業にチャレンジしたいと思っている人たちへのメッセージ、応援のアドバイスを頂戴できればと思います。

岡田:これは酒井のことを褒めてるみたいで嫌なんですけど(笑)。

事業って、雪だるまみたいにどんどん転がしていくたびに大きくなっていくもので、諦めずに転がしてると、一緒に押してくれる人とか応援してくれる人が増えてきて楽になってくるものだと思っています。実際に転がしてる本人からすると、手もドロドロになって冷たいし、やっぱりすごいしんどいんですけど、そこを笑顔で楽しそうにやってると、大きくなるスピードは早いんじゃないかな、と思います。

だから、どれだけ手が痛くても、しんどくても、「楽しそうに頑張れ!」と言いたいです。

酒井:もう岡田が言ったことと全く同感です。もちろん私たちも雪だるまを転がしてる最中で、アドバイスなんて送れるほど大層なことはやれていないのですが、同じく頑張っている人たちもいっぱいいると思うと、すごく楽しくなってきて勇気がもらえます。

これからも同じ志を持つ仲間として、一緒に楽しく雪だるまを転がしていきたいなと思います!

編集後記

本メディアで初の二人での対談形式のインタビューでしたが、二人のうちどちらが欠けていても今の「ソナエル」事業の形はなかった、と思うほどナイスコンビなお二人でした。

事業構想・立ち上げからの出口設計も見事で、社内新規事業において参考になるポイントも多々ありましたが、正解がなく不確実性の高い新規事業であるからこそ、本当に信頼出来る仲間がいることの重要性も再認識させられる内容であったかと思います。

コクヨ株式会社のファニチャー事業の中で、ますますアグレッシブな戦略を描いている「ソナエル」事業の今後の展開に、引き続き注目して期待したいと思います。


取材・編集・構成:加藤 隼 撮影:川上 裕太郎 デザイン:古川 央士

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コクヨ株式会社

酒井 希望

2006年に新卒入社し、文房具用品の営業を経て、防災事業の立ち上げに携わる。 「ソナエル」事業のビジネス領域全般を推進。

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コクヨ株式会社

岡田 量太郎

デザイン事務所・建築事務所等の経験を経て、2014年に中途入社。 デザイナーとして「ソナエル」事業の企画・デザイン・ブランディング領域を担当。