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【イベントレポート】incubation inside Night vol.1 〜社内起業家というキャリア〜

【イベントレポート】incubation inside Night vol.1 〜社内起業家というキャリア〜

incubation insideでは、世の中の社内起業家を支援すべく「社内起業家インタビュー」を中心にコンテンツ発信を続けています。取材を続ける中で、「社内起業家同士を横で繋げるコミュニティ」のニーズを強く感じ、incubation inside発のコミュニティイベントとして、経済産業省との共催で「incubation inside Night」を定期開催していくことにしました。

今回のテーマは「社内起業家というキャリア〜その先にあるもの〜」。起業でもなく、既存事業でもない、企業内新規事業というポジション。そこにあえて飛び込むという選択肢はキャリアとしてどうなのか。先人たちを招いてホンネのトークから社内起業家のキャリア論を紐解きます。

 

オープニング挨拶:アルファドライブ 古川 央士

古川:本日は「incubation inside Night vol.1」ということで、初めての社内起業家コミュニティイベントの開催となります。前半は登壇者のお二人それぞれに、関わっている会社と事業の紹介をいただきまして、後半ではトークセッションを通して、オフィシャルな場所では聞きづらい話を根堀り葉掘り、深ぼっていきたいと思います。

イベント開始前にご紹介ですが、本日のイベントは「日本企業の新規事業を応援したい」という思想に共感いただいた経済産業省の協力のもとで運営をしており、会場も省内にある「未来対話ルーム」を使用させていただいています。

このスペースは「未来社会に対して、対話型での政策形成を行うために、組織内外の多様な関係者が集って議論できる場所」というコンセプトで運営されています。企業の垣根を超えて、社内起業家の方々同士で交流できるような機会もなかなかないと思いますので、ぜひこの場所で、参加者の皆さま同士も繋がっていただいて、日々の悩みの共有や意見交換などしていただく場に出来たらと思います。

それでは早速、登壇者様のプレゼンテーションから開始していきます!

登壇者プレゼン:LIFULL senior  泉 雅人 氏

泉氏:LIFULL seniorの泉と申します。2010年から株式会社LIFLL(以下、「LIFULL」)で働いていて、まさに10年目に突入しようとするところです。

LIFULLグループの主力事業は、住まい探しのポータルサイト「LIFULL HOME’S」なのですが、並行して「2025年までに100社の子会社を作っていくぞ」という動きがあります。狙いとしては、「グループの中で経営者をどんどん排出していきたい」という代表の井上の思いがあって、「経営者として成長をしていく道は実際に自分で経営をするしかない」ということから、2013年ころから子会社がいくつかでき始めて、私が代表を務めるLIFULL seniorも社内から生まれ子会社化した会社です。

私がやっているのは「LIFULL介護」という介護領域の事業です。立ち上がったのは2008年7月24日。もうすぐ11歳になりますね。「LIFULL HOME’S」が不動産領域の情報サービス業だとすると、私たちは介護施設・高齢者住宅の情報サービス業という位置付けになります。

始まりは、2007年ころのLIFULLの従業員の実体験で、「自分のおばあさんの老人ホームを探す時にインターネット上に情報がなく非常に困った」ということがあり、その情報の非対称性を解消するためにこの事業を提案し、事業化して、私が途中から引き継いで成長させていった、という経緯になります。今では業界の中でトップクラスとご評価いただけるようなサービスに成長しました。

私たちがやっているマーケットの話ですが、日本の高齢化率は現時点28%くらいで、これがあと40年経つと、国民の40%は高齢者になる時代が来ることが見えています。世界的に見ても日本の高齢化率は先進国の中で断トツ1位、課題もまだまだ沢山ある市場だと思っています。

今後の展開としては、介護領域だけではなく「シニア」という大きな文脈で考えています。例えば健康のケアや孤独を癒すことも考えらます。そういった展開の一環で、「遺品整理」に関する情報をまとめたサイトも運営しております。

私たちが目指しているビジョンは「シニアの暮らしに関わる全ての人々が笑顔あふれる社会の仕組みを創る」ことです。介護だけではなく「おじいさんおばあさんの暮らしに関わる家族やサービスを提供されている事業者様も全部含めて、シニアの暮らしに関わる全ての人々の課題を解決する」といったことを、ビジネスとして仕組みで解決していくことを目指している会社でございます。

登壇者プレゼン:セイノーホールディングス 河合 秀治 氏

河合氏:皆さんこんばんは。河合でございます。私は西濃運輸という物流会社に入社いたしまして、21年目のプロパー社員です。私どもはトラックのドライバーからスタートさせるというスタンスの会社でして、新卒でドライバーからキャリアを始めて、その後いろいろあって新規事業という領域を担当することになりました。

現在は自分で作った複数の子会社を経営していまして、株式会社としては10個の会社の代表、取締役を務めながら、一般社団法人としては3つの法人の運営に関わっています。

その中でも一番長くやっているのは、2011年に自分で作った会社のココネットという会社です。「買い物弱者対策」ということで、高齢者の方に向けて食料品をご自宅までお届けしたり、見守りをしたり、御用聞きをしたりっていうことを全国で展開をさせていただいております。

その他にも、私自身がやっていることをいくつか抜粋をして紹介します。例えば、子供の貧困対策ということで、私どもとNPOと文京区でタッグを組んで「コレクティブインパクト」という手法を使って、貧困家庭に食を届けるということをやっています。あとは、「モエ・アグリファーム」という野菜の自社栽培の事業をやったり、ドローンの配達をやったり、といったところですね。

その多くは、私どものグループが持っているアセットをもとにして他社と連携していくというオープンイノベーションの手法を使うことが前提で出来上がっています。「自社のアセット×他社のノウハウ」ということで、スタートアップの皆さんや、大学、NPO、自治体の方々も含めて掛け算して生み出していく、というのが今現在取り組んでいることです。

セッションアジェンダ①「新規事業家としての始まり」

古川:それでは早速トークセッションに入っていきたいと思います。「キャリア」というテーマを深ぼっていきますが、是非ぶっちゃけ話の本音トークをお願い出来ればと思っています!

最初のトピックスとしては、「新規事業家としての始まり」についてです。始まり方として、大きく分けるとトップダウンとボトムアップがあると思いますが、お二人の場合はどんな形で始まったのかをお聞きしたいと思います。

泉氏:私の場合は、入社した時に介護事業を立ち上げた者が別にいて、その人が事業を一人で始めたばかりでしたので、「人手が足りないから手伝ってもらっていいですか」っていうところからスタートしました。当時は特に介護業界に詳しかったわけでもない中で、たまたまそういう縁があって新規事業に関わり始めました。

河合氏:私は、それまでのキャリアの中で、例えば、ISO9001の取得や内部統制ルールを作るといった、いくつかゼロイチのプロジェクトの経験をさせてもらっていて、その中で、立ち上げる仕事が自分に合っている感覚を感じていまして。その後に新しい事業企画を考える部署に配属になったことが1つのきっかけになっています。
その中での仕事が「事業計画通りに事業を作れ」みたいなそんな感じだったので、「これはまずい」と思いまして、先ほど紹介した「ココネット」という会社の前身となるプロジェクトを自分で作って、岐阜県大垣市の本社から、いつのまにか東京にプロジェクトを作るということをやりました(笑)。

古川:新規事業をやりたいという気持ちが生まれた瞬間というのは自分の中でありますか?

河合氏:私は、入社3年目くらいでやったISO9001取得のプロジェクトが結構大きいです。もうほとんど徹夜状態でやっていて、審査が通った後には役員の偉い人達が揃って褒めてくれる、みたいな経験がありまして(笑)。

泉氏:私は、大学卒業して最初に仕事する時に、「どうせ仕事するなら事業を作れる人になりたいな」っていう漠然とした思いがあったんですよね。そこから、大きな会社の新規事業の営業をしたりして、その思考でやっているうちに、今のここにたどり着きました。

古川:なるほど。お二人ともある程度内発的に自分からっていう気持ちが強いと思うのですが、自分から手上げで事業を始める人達と、任用されて取組むことになる人達と大きく2つに分けた時に、どういった違いを感じますか?

泉氏:その2つだとタイプが違うと思うんですよ。着想する能力が高くて、ホイホイとアイデアが出てくるタイプの人と、凄まじい実行力がある人との両方のタイプがいると思ってまして。ですので、着想が強くて手を挙げるような人に、実行力がある人を付けて一緒にやらせるのが良いのかなと思っています。

河合氏:推奨しているのは手上げですね。やっぱり内発的動機が大事です。美しいのはやっぱり内発的動機がある人の手挙げで、言い出しっぺがそのまま責任を持ってやることで最後まで続く、というケースは多いと思っています。

とはいえ、沢山の事業を同時並行で走らせる中ではそんなこと言ってられないので、自分がアイデアを考えて、そこに人を付けることももちろんあります。素質のある人にやらせると、もらったアイデアでも、我が事のようにちゃんと背景を理解した上でストーリーも企画も作ってプレゼンテーションもするというところがあって。そこは任せる人によると思っています。

古川:任用する場合は、どのような観点や基準で選ぶことが多いですか?

泉氏:やっぱり、新規領域ではなくても、何かを成し遂げたとかやり切ったという経験がある人はいいですね。

古川:少し話を変えて、お二人はもともと今やられている事業に対するWillや想いはお持ちだったのでしょうか?

泉氏:私は、どうせ仕事をするなら「負を解消して人の役に立っているな」と実感できる事業に携わりたいと思ってLIFULLへ来たんですけど、そのような思いもある中で介護事業に関わり始めたので、わりと繋がっていた感覚はあります。
基本的に、我々のサービスを使っていただいている方々は、困っている方々が多いので、その負の部分を試行錯誤して解決していくというビジョン・価値観には共感していて、やはりそこに意志があったんだと思います。

河合氏:物流業界は荷主の皆さんのものを預かっているというスタンスなので、基本的に「誰かへの貢献」というところがベースにはあります。

その中でも「買い物弱者対策」とか「貧困家庭対策」とか色々な事業をやっているんですけど、それには自分の原体験みたいなことがあって、それと物流の力を掛け合わせて解決したい、という気持ちは強いですね。

古川:もともと何かしらの取っ掛かりはあって、やっていく中で育まれてくる部分もあるのかなと思っていて。

河合氏:そうですね。取り組んでいくことで、分かることもやれることも増えてきて。徐々に「あれもできる、これもできる」という風に広がってくる、ということはあるかもしれないですね。

セッションアジェンダ②「企業内新規事業家の評価」

古川:アジェンダを変えて少し生々しい話に迫っていきたいと思います。お二人のキャリアだと既存の枠組みの中で査定・評価をすることは難しいんじゃないかなって思うのですが、お二人自身は、どのような基準で社内から評価をされてきたか自己認識されていますでしょうか?そもそも新規事業家ってどういう基準で評価されるべきだと思うか?という部分についてもお伺いしたいです。

泉氏:今の立場上、原則は誰かに評価されるというのはそんなにないんですけど、役員報酬を決める際にはグループ内で一定の基準を設けていて、その範囲内で査定と評価はしています。

古川:事業を立ち上げ始めたばかりのころはいかがでしたか?新規事業なので、事業の評価と個人の評価を連動させていいのかといったところは難しいポイントだなと思うんですけど。

泉氏:そのころは普通の一社員として評価をしてもらっていたので、自分が宣言した目標と結果を照らし合わせての評価でした。でもやっぱり既存事業で他の仲間が頑張って稼いできてくれた資金でやらせてもらえているので、そこは自分もプロとして結果を出す、っていう。

河合氏:弊社の場合は、事業評価は完全にPLをベースに見ていますが、それが個人評価に影響してたという印象はあまりないですね。だからこそやりやすかったのかもしれない。

古川:逆にアップサイドもそこまでない?

河合氏:下がることもなければ、アッパーにいっても特に何もないっていう感じなので、「あえてそこに突っ込んでいくのがリスクだよね」っていうのが一般のサラリーマンの見方。「そんな危険なとこいってお前何したいの、何もなく過ごしていればそれなりのキャリアになるでしょう」みたいな見られ方をすることはありますね。

今後のイントラプレナーの評価って「異端児度」みたいな尺度で評価したり、オープンイノベーション文脈では、スタートアップとの繋がりの量とかコミュニケーション量とかで評価してあげられるといいな、とは思いますけど。まだまだ社内の仕組みは出来上がっていないですね。

古川:そのような評価が仕組みで出来たら画期的ですね。

河合氏:今はいわゆるサラリーマンとしての評価しか出来ていないので、「評価によってモチベートされているか?」というとちょっと違うかなっていう感じがあって。それが良さもあるけど、新規事業に関わっている人たちをモチベートしづらいという悪さもありますね。

泉氏:挑戦を推奨することはすべきですよね。あとは仮に失敗をしても「ダメなやつ」というレッテルを貼らずに、むしろナイスチャレンジだ、っていう空気作りにグループ全体で取り組んでいますね。

古川:食い下がりますが、既存部署から見たときに「いくら頑張っていても事業としての成果が出てないなら評価できないよね」みたいな見られ方をすることもあったりするじゃないですか。もし評価基準を作るのであれば、そことどう戦っていくつもりですか?

泉氏:すごい難しい話だと思うんですけど、今のグループ全体として、そこまで極端に差がつく評価をしていないので「目に見える成果がなくても、まあ別にやったらいいんじゃない」っていう雰囲気はあって。「チャレンジの経験が出来る」っていうこと自体に価値を感じてもらえれば、特に若い人だったら手を上げてやりたいです、って言ってくれるんじゃないかなと思っています。

古川:泉さんで言うと、そういう制度も設計できる立場だと思いますので、ぜひチャレンジしていただきたいです! 関連して次の話題ですが、仮に金銭的なインセンティブがあった場合、事業推進にとってどの程度のインパクトがあると思いますか?すでに制度として運用されているものがなくても、お二人個人としてのご意見を伺いたいです。

泉氏:個人的には、イントラプレナーはこれを目的にしちゃいけないとは思いつつ、挑戦した人に対して、もし大きな事を成したときに正当な評価を貰える仕組みはあってしかるべきだなとは思います。ただ、「そのために挑戦する」っていうのは少し違うかなと。

ちょっと綺麗事かもしれませんが「仕事の報酬が仕事」っていうのが美しい姿であって、「挑戦したからこそ経験が積めて、その結果として自分もすごく成長できたぞ」とか「失敗したとしても、自分のキャリアとしては他では得られなかったものがあって成長できる」というところに価値を見出してもらうことが前提の上で、「アップサイドもあるけどね」みたいな感覚が、バランス的にはちょうど良いのかなって思っていますね。

河合氏:社内で言うと、「一つのロールモデルになっていきたい、けもの道を作っていきたい」っていうのがありまして。フェラーリ乗ってるとかまではいかなくても「アイツ楽しそうにやっているし、世の中にもためにもなっているし、それなりに貰うものもらっているよね」っていう。後輩たちにはそういうその働き方の選択肢を見せていきたいという思いはあります。

今は特別なインセンティブの制度はないんですけど、こういった制度を導入しないと、キャリアとして外部のスタートアップとかをチョイスされてしまうケースっていうのがやっぱり出てくると思うんですよね。我々の会社をキャリアの選択肢に残してもらうためにストックオプションを渡せばいいのかというと、全部がそうではないんですけど。

泉氏:自分のためではないですが(笑)、今後の若い世代がチャレンジしていく中で、何かしらの制度はあった方がいいと思います。まあ、あくまで社内新規事業なので「インセンティブがないならやらない」っていう極端な人はそもそも向いていないと思うんですけど(笑)、ないよりはあった方がいいんじゃないかなって気はしますね。

セッションアジェンダ③「社内と社外」

古川:今までの話の中で、「外との競争になってくる」といった話もありましたが、「社内と社外」という話は永遠のテーマかなって思っていまして、新規事業を中でやることと、外でやることのお二人なりの見解を聞いてみたいと思っています。

泉氏:私は、元々は「自分で何かしたい」と思っていながら、外で会社を作るとかはやってきてないんですね。ただ、会社員としてある程度保障された身分で、これだけ好き勝手チャレンジさせてもらえていることについてすごく感謝しています。誰しもが「身銭を切って俺がやるんだ」という人ばかりではないと思うので、その意味では、私は一つの良いロールモデルになれたんじゃないかなと思いますね。ただ、やっぱり外で立ち上げて完全に一国一城の主としてやっている人のスピード感は桁違いで、そういうところには時々憧れたりしますね。

古川:今の運営の中でどのあたりが遅いと感じますか?

泉氏:スピードの話だけで言うと、自分たちの子会社単体だけで考えればもっと柔軟に身動きできるのにな、とか。やはりグループ全体で数字を作っていくのが基本で、上場企業の基準でやっているので、そこの遅さはたまに感じますね。

河合氏:うちも全く同じ。社内で個人保障も取られずに、好き勝手なことをやらせてもらってるのはありがたいですが、やっぱりスピード感で言うと、周りの起業家の皆さんと相対している中で憧れる、というところはありますね。

上場会社の子会社なので、役員会を通すとか、それなりのルールに基づいてやらなければいけない。色々な方に分かってもらえるように説明しなきゃいけないので、事前説明用の資料の数が増えていく。皆さんすごく頷いてますね(笑)。ところが、自分が経営権を持っている子会社であれば、もう3秒で決められるわけですよね。これは圧倒的な差なんですよね。

古川:本体の中の事業と子会社としての運営でも違いが大きいのではないかと思いますが、どのような変化がありましたか?

泉氏:大きかったのは採用ですね。自分で会社を作っていくって仲間集めだと思っていまして。

「どういう仲間を何人入れてどこに向けて事業の舵を切っていくか」という最終決定を全部自分で出来るっていうのは非常に良いですね。それが親会社の中だと、計画で人数が決まってしまって、追加したかったらそもそもお伺いに行かないと出来なくて、何より希望する人材が来ない。子会社になって、とてもいい仲間を集めやすくなったな、と思っています。

河合氏:私のところはPL責任が1番大きな変化ですかね。一時期は本当に大赤字で、大変な状況になっていて、そうすると毎日お金の夢しか見ない。そこまで赤字が膨らむと、「もう何やっても戻らねぇんじゃないか」という夢を毎日見続けるんです(笑)。

結果的にはなんとか生き残ったんですけど、「従業員の給料を払う」っていう責任もそうだし、採用するのも責任なので、プレッシャーは圧倒的に大きくなりましたね。

古川:採用の自由度がある反面で責任もあって、表裏一体ですよね。

河合氏:採用した分は売上を上げないと、というね。

泉氏:メンバーの皆の後ろに、その家族の姿も見えるんですよね。「子供が生まれました!」と言われると、こちらも「おめでとう」って思い、そう言いながら、同時にプレッシャーも感じまして・・・。

河合氏:安易に「おめでとう」と言えない(笑)。

セッションアジェンダ④「今後のキャリア」

古川:セッションのアジェンダとしては最後で、「今後のキャリア」について伺っていきたいと思います。今後の個人としてやりたいことと、会社としてやりたいことを、どういうバランスで考えていますか?ということを、ぶっちゃけでお伺いしたいと思います。そこも含めた今後のキャリア観について教えてください。

泉氏:今は会社も作らせてもらって、新しい事業に取り組んではいますが、「自分一人がそれをやっていても、世の中そんなに変わらないんだろうな」って思っていて。新規事業にチャレンジしたい若い人に対して、知恵と経験を使ってバックアップして、LIFULLの新規事業を応援していきたいという思いがあります。

将来的には、そこに資本っていう意味で、お金の面でも手助けするようなことが出来たら、もっとどんどん新しい事業が生まれてくると思っていて、私一人で頑張っているよりは、ちょっとでも世の中がいい方向に行くんじゃないかな、と。

河合氏:社内インベスターですかね!

泉氏:そうですね。限りある自分の残り時間の中でどれだけの価値を生み出せるかって思うと、一人だけでやるよりも、そういう人を増やす応援が出来ればと思っています。

古川:河合さんはどうでしょうか?

河合氏:私は社会課題解決に取り組んでいる中で色々な課題が常に出てくるので、それを微力ながらも色々な方々と協力しながら解決していきたいという気持ちがあります。その思いが会社の「SDGsに取り組みたい」という文脈と合致することはあるかな、と思っています。

古川:踏み込んで聞きますが、もし仮に社外に出るという未来があるとしたら、どういう状態だったら外に出てチャレンジする可能性がありますか?

泉氏:私は今の事業に10年近く関わってきて、それなりに自分の子供を育ててきてるみたいな感覚がすごくあるんですよ。なので、そんな簡単に「あとはよろしく」ってやるつもりはないという前提で。「我が子を託せるな」っていう人材が現れた時に、その人に成長してもらうきっかけ作りと、あとは、自分のレベルを上げるためのチャンスがきたと思ったら動くこともあるのかもしれないですね。

古川:河合さんはどうでしょうか?

河合氏:優等生の回答をすると、シリアルイントラプレナーになりたいです(笑)。連続起業家はいますけど、「連続社内起業家」はなかなかいないと思いますので、その流れを作っていきたいとは思います。

そうは言いながらも、やはり社会課題解決をしたい思いも強く持っているので、今の組織にいるよりも社会課題のインパクトが出せると思われる組織・ポジションがあった場合は考えるかもしれないです。現状は今の組織にいることが最もインパクトが出せると思っているので、ここに所属していた方がいいだろうというチョイスですかね。

古川:自社の後輩たちのサポートもされていると思いますが、具体的にどんなことをされているんですか?

泉氏:オフィシャルなのは社内の新規事業提案制度の支援で、そのメンタリングには出来るかぎり時間を割いていますね。あとは、新規事業ネタが大好きな若者が集まる社内コミュニティがあって、そこで気軽にお昼ごはんとかを食べながら色々と話をしていたりします。

河合氏:うちの場合は、オープンイノベーション推進室を持っているので、ここにメンバーを募ってインキュベーションしていくっていうことをやっています。若い子達には、フレームワークも手とり足取り教えている状態ですね。あとは、色々なイベントにはどんどん出させているので、そこの場数はこなさせていますね。会社としては結構自由にやらせているので、そのための環境は整っていると思います。

一方で、新規事業ってやっぱりカッコいいことばっかりじゃなくって、簡単にはいかないじゃないじゃないですか。その苦しい時間が長いほど、心が折れていっちゃうケースがあるので、「どういう経験をさせるか」みたいなことは注意深く観察しながらやっていますね。

来場者へのメッセージ

古川:最後に本日の感想も含めて、来場されている皆さんへのメッセージをお願い出来ればと思います。

泉氏:あくまで自分の経験のシェアとしてお話をしますと、私は分からないことや不明確なことも結構楽しんでやってこられたと思っています。全然前に進めない時や、すごく地味な仕事をやらなきゃいけないこともありましたけど、楽しんでいたからやってこられたのかなって思っています。

なので、1日でも早く結果が欲しいっていう気持ちは分かるんですけど、そのプロセスとか、ないものを組み立てていっているという、その瞬間を楽しむ。ロールプレイングゲームと同じで、「何もないところから強くなっていくという瞬間を楽しめるかどうか」だと思っています。そういう感覚を持ちながら自分の目の前の仕事に没頭できたというのが、この10年間なのかもしれないです。

河合氏:私も最後くらいはしっかり優等生コメントを残しておきますね(笑)。私のような者が社内で自由に動ける環境を整えてくれているっていうのは、本当にありがたいなと心の底から思っています。その思いはちゃんとあった上で、引き続き「臆せずに色々なことを創っていきたいな」と思っています。

そういう意味では、ここにいらっしゃる皆さんは新規事業を創っておられているので、ぜひ連携させていただきたいです。大企業だ、中企業だ、ベンチャーだ、っていうのはあまり関係なくて、共通の課題にコミットしてみんなで共創していけるとすごくありがたいなと思っています。

私自身は、やっぱり社内の会社も持ちながら新規事業もやっているっていう半魚人みたいな状態ですので、皆さんから色々なテーマを投げていただくと、「こういうテーマはこっち、ああいうテーマはあっち」というように上手くマッチングして仕立てられると思います。特に物流分野で何か課題をお持ちの場合は、ぜひ一緒に考えたいですね。ぜひお声掛けお待ちしています。

編集後記

本メディア「incubation inside」を起点とした初めての社内起業家コミュニティイベントでしたが、このパネルディスカッションの後の質疑応答・交流会も非常に盛り上がり、大盛況のうちに幕を閉じました。

セッションコンテンツも、参加者同士の交流コンテンツも、さらに磨きをかけて第2回イベント企画開催しますので、ぜひ次回開催も期待をしていただければと思います!

 

撮影・編集・構成:加藤 隼 イベント企画・モデレーション・デザイン:古川 央士

泉 雅人-image

株式会社LIFULL senior

泉 雅人

2002年に大学卒業後、様々な業界とキャリアを経て、2010年に株式会社ネクスト(現株式会社LIFULL)に中途入社。 入社後は新規事業であった介護事業に携わり、事業立上げの前任者から引き継いで事業の成長を牽引。 2015年の分社化にともなって、株式会社LIFULL seniorの代表取締役に就任。 LIFULLグループの新規事業提案制度「SWITCH」の社内アクセラレーターも務めるなど、グループ全体の新規事業創出にも貢献。

河合 秀治-image

セイノーホールディングス株式会社、ココネット株式会社、セイノーメンテック株式会社、株式会社モエ・アグリファーム

河合 秀治

1997年に西濃運輸株式会社に入社し、豊川支店でのドライバー業務、本社監査室での業務等を経て、ISO認証取得プロジェクト、行動変革プロジェクト、内部統制プロジェクト等に携わる。 2016年からはセイノーホールディングス株式会社のオープンイノベーション推進室長に就任し、複数の新規事業開発を推進しながら、ココネット株式会社等の子会社社長も務める。

古川 央士-image

株式会社アルファドライブ

古川 央士

株式会社アルファドライブ 執行役員、株式会社ノックダイス 代表取締役CEO、認定非営利活動法人グリーンバード プロデューサー、一般社団法人ワーク・アット 理事。学生時代に電子書籍関連のベンチャーを創業経営。株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOで UI / UX組織の立ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。NPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。2018年11月に株式会社アルファドライブ執行役員に就任。

incubation inside Night vol.1について

本メディア「incubation inside」では、世の中の社内起業家を支援すべく「社内起業家インタビュー」を中心にコンテンツ発信を続けています。

本メディアの取材を続ける中で、「社内起業家同士を横で繋げるコミュニティ」のニーズを強く感じ、「incubation inside」発のコミュニティイベントとして、経済産業省との共催で、「incubation inside Night」を定期開催していくことにしました。

■テーマ
「社内起業家というキャリア〜その先にあるもの〜」
起業でもなく、既存事業でもない、企業内新規事業というポジション。そこにあえて飛び込むという選択肢はキャリアとしてどうなのか。先人たちを招いてホンネのトークから社内起業家のキャリア論を紐解きます。

■開催概要
主催:株式会社アルファドライブ
共催:経済産業省
開催日時:2019年7月16日(火)
会場:経済産業省 未来対話ルーム