【SONY_toio】次世代型ゲームで新しい楽しさを創造する

〈プロフィール〉
ソニー・インタラクティブエンタテインメント
プラットフォームプランニング&マネジメント部門
T事業企画室 課長 田中 章愛 氏

2006年に筑波大学大学院修了、同年よりソニー株式会社入社。
2013年~2014年スタンフォード大学訪問研究員。
機械・メカトロニクスエンジニアとして協働型ロボットやエンタテインメントロボットの研究開発や留学での研究活動を経て、2014年よりソニーの新規事業創出プログラム(SAP)(現・Sony Startup Acceleration Program(ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム、SSAP))の立ち上げ・運営に携わり、ハードウェア製品のプロトタイピング・商品化・事業化に従事。
toio」の企画・開発を試作段階から担い、同プロダクトは2016年に同プログラムが主催する社内オーディションを通過。以降はプロジェクトリーダーとしてtoio事業を牽引。

目次

研究畑から新規事業開発の仕組みを作る側へ

―まずは田中さんのキャリア・経歴についてお伺いしたいと思います。toio事業に関わる以前はどのような仕事をされてきたのですか?
ソニーに入社したのが2006年で、そこから2013年までは基本的にずっとソニー本社の研究所にいていくつか研究所を渡り歩きました。その中でロボット技術の基礎研究や、コンセプト、製品プロトタイプ作りなどをやっていました。なので、その当時は世に出る製品は作っておらず、5年後、10年後を見据えた先の長い仕事をしていました。

―直近ですぐに商品化を目指すものではなく、いわゆる研究開発の仕事ですね。
そうです。そこで主にハードウェア、メカトロニクスの技術を中心に、例えばモーターの設計などを担当していました。

―新規事業領域に関わり始めたのはいつ頃からですか?
入社から5年ほどは研究職だったため全く縁がなかったんですが、2012年頃にたまたま自分が所属していた部署で「自由なテーマで新規事業につながる物を作っていいよ」という時期がありまして。
その頃は自由に社内を動き回りながら、今も一緒にtoioをやっているアンドレ・アレクシーという研究員に出会いました。彼はコンピューターを使った新しい遊びの仕組みや体験を考える研究をしていたので、「一緒に考えようよ」と持ち掛け、私が研究していたロボット技術を掛け合わせた様々なプロトタイプを作りはじめました。そこでtoioの原型になるプロトタイプを何十種類か作って、「これをもっと深堀りすれば製品になるんじゃないか」って気持ちはあったんですが、そのプロジェクトは当時時点では技術面も含めいくつかハードルがあって休止してしまいました。

―その後は留学もご経験されてますよね。
2013年に会社の制度を使って、スタンフォード大学で1年間の研究留学をする機会を得ました。いわゆるシリコンバレーとか、ベイエリアと呼ばれる地域にいたので、そこでスタートアップの人達と知り合いになったり、スタートアップ向けのアクセラレーターとかに色々遊びに行ったりしながら、「こうやって新規事業ってできるんだな」とか「スタートアップってこうやってできるんだな」っていうのを感じながら過ごして。
あとは同じ研究室の中に、自分の研究をしながら起業して後にすごく有名になったプロジェクトを作った人もいて、「目立つスタートアップも実際はこうやって地道に製品を作っているんだな」というのがすごく肌感覚として得られた、という経験をしました。

―留学経験によって、スタートアップのリアルな部分を学ばれたんですね。
はい。
そして、帰ってきてからは、新規事業創出プログラム(SAP)(現・Sony Startup Acceleration Program(ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム、SSAP))の立ち上げに実担当者として入って、クリエイティブラウンジという共創スペースを作ったり、ハードウェア系のインキュベーションの仕組みを考えたりしながら、自分自身も一つの製品に関わるという意味で「Qrioスマートロック」のプロトタイプ・製品作りにも関わっていました。

―田中さん自身としても新規領域に対する思い入れもあり、で関わっていたんですか?
そうですね。当時の問題意識として、ソニーの中では新しい事業を生み出す「仕組み」がなくて、新事業が生まれやすい部署とそうでない部署があったりしたんです。そこをもう少し仕組み化して、「これまでにないような製品ジャンルのアイデアが出てきても、事業部や領域と関係なく、新規事業として立ち上がるように投資する仕組みを作った方がいいんじゃないか」という発想で始まったのがそのSAPです。
僕自身もロボットの研究をやってtoioの原型も作ったりしながら、当時だと「どこで事業化したらいいのかがよく分からなかった」というところもあって。
既存の仕組みがないのであれば、その仕組み・プロセス自体を作るチャンスなので、やりたい気持ちがある自分としては、その仕組み化に貢献できるんじゃないか、と思い関わっていました。

toio事業化への再チャレンジ

―toio事業の正式な立ち上げまではどのような経緯だったのでしょうか?
2016年頃までは、スマートロックも含むいくつかの事業立ち上げ支援を担当していたんですけども、ちょうど自分としても「そろそろ自分で発案から深くかかわったテーマを事業化したいな」という気持ちが強まったのと、技術的にも、IoTブームによって部品や技術もこなれてきたので、「そろそろ昔考えたアイデアが実用化できるんじゃないかな」という思いがあったので、2016年にtoioのアイデアをSAPのオーディションという提案の場に持っていって、無事に通過して、予算を得て、正式プロジェクトになった、という経緯です。

―一度はプロジェクトの検討中止になって、それでも諦めなかったのはどのような想いだったのでしょうか?
応募する頃に、開発者のアレクシーとも話し合って、自分で言うのもなんですが、「あれ面白かったよね!」と。実際にお子さんに触ってもらうユーザーテストもやっていて、子供たちがすごく喜んでいて。「家に持って帰りたい」ってたくさん言われたのにお届けできないっていうのはもったいないな、と。
自分たちもやりたいし、実際にユーザーテストの中ですごく強い声をいただいたので、「これは製品化したいな」っていう思いがずっと残っていて。

オーディションの段階で出会ったもう1人の開発初期メンバーで、「中山」という人間がいるんですけど、その出会いも大きくて。応募段階の書類を見て「一緒にやりたい」っていうことで加入してくれて。彼はソフトウェア製品に10年以上関わったプロフェッショナルなので、スタートアップメンバーに加入してくれたことで、製品化に向けてよりリアリティが増した、ということもありました。

―オーディション通過後はどのような流れで進めていったんですか?
そこからインキュベーション期間に、色々なプロトタイプを作ったりビジネスモデルを考えたりして製品像を固めて、2017年に公開したというのが大きな流れですね。

―ハードもソフトも開発する、という中でものすごいスピード感だと思うのですが、その期間での紆余曲折や苦労話もあれば教えていただきたいです。
そうですね。そこは猛烈に開発や仮説検証をやっていました。
ちょっと死にそうでしたね、っていうのは冗談ですけど(笑)。
まず最初の3ヶ月くらいで、技術的な検証と、「何をお客さんにお届けするのか」っていう製品像そのものはしっかり作り込んで。SAPの中の研修制度があったので、並行してリーンスタートアップ的な考え方も習ったりもしながら事業化に向けて邁進していました。

―プロトタイプとヒアリングの繰り返しの日々ですか?
3Dプリンタを使ったりもしながら、自分たちで設計して、作って、聞いて、直して、っていうのを毎週繰り返しするような感じで。
ちゃんとPTAにも許可を取って、近所の小学生にどんどん会いに行って、触ってもらって。親御さんにも来てもらってインタビューして、っていう検証を最初の3ヶ月でやりながら作ってました。

―どのくらいの人数の小学生に会われたんですか?
2017年当時、発表までの通算では200人くらいなんですけど、最初の期間は30人くらいですね。
最初の3ヶ月にアイデアの種として出てきたものは、シンプルなデモでいくつか作り込んで、遊んでもらった中でとても受けが良かったので、反映させたりしています。今作っているドライビングのゲームもそのユーザーテストでもすごく人気だったものなので、これから楽しみにしているところです。

―ヒアリングから次のプロトタイプに活かすサイクルを、ブレずにスピーディーに上手く回せたポイントはどのようなところでしょうか?
やっぱり「体験を届けたい」というか、そのお客さんに「こういう遊びを届けたい」っていう思いが強くて。特に子供たちはすごく正直に反応してくれるので、つまらないものには全然反応してくれないですし。とにかく試してもらって、そこで判断すればブレないだろうな、というのが一つ目です。

もう一つは、「ロボットを売りたい」というよりは、「ロボットで実現できる遊び」っていうところにフォーカスするところは大事にしていました。「1回提供して終わり」っていうものではなく、裏側にプラットフォームを作って、色々なクリエイターさんと一緒に、毎回まったく違う、枠にとらわれない体験を届けることで、新しい価値を提供し続けたいという気持ちがあったので、カートリッジとタイトルを作るという構想自体はお客さまの声というよりは、開発者の意志としてブレずに持っていました。

―プロトタイプ検証の後も引き続き苦労はありましたでしょうか?
そうですね。逆に言うとプロトタイプまでは3ヶ月くらいで、極論すると製品像自体はパッとできたんですけども、じゃあそれを「どうやって事業化するのか、どこで量産するのか、お金が回るのか」といった部分は苦労しました。

―ビジネス的な部分ですね。
色々な計算をしたり、ビジネス的な設計をしないといけなくて。そこに対しては専門家ってわけでもなく、当時は経験も全然なかったので、色々な人に教えてもらいながら、メンバーにも専門家の人間をどんどん加えていって、チーム作りも含めて進めていきました

―その期間でチーム自体も大きくされていったんですか?
そうですね。2017年の発表までには専任メンバーも数人増えて、あとは当時のSAPのアクセラレーター(加速支援者)のチームからも何人も来てもらい、チームも大きくなっていきました。
そうして量産準備もして、翌年の2018年の1月にクラウドファンディングの仕組みを使った先行予約分を出荷しました。

―その時の反響も大きかったんですか?
まず2017年の先行予約の募集をする段階でもすごく反響をいただいて、そのあと実際にお届けして皆さまの手元に届くと、「これだけ楽しんでいます」というリアルな反応をもらいました。
そこからは、エンタテインメントとモノ作りが融合した会社のソニー・インタラクティブエンタテインメントに事業を移し、プレイステーションのチームと共にゲーム作りのノウハウと、モノづくりのインフラを活用しながら事業を運営しています。

―事業会社の中に移管して進めづらくなった部分などはないですか?
会社としては大きいんですけど、マインドセットはむしろスタートアップ的で「立ち上げ魂」みたいな人がすごく多くて。
「面白いもの作ろう」とか、立ち上げのプロみたいな人が本当にたくさんいて、そこはすごくやりやすいです。あとはビジネスモデルも同じく「プラットフォームがあって、コンテンツがある」っていうものなので理解もしていただいて、そこからはもう仲間として一緒に働いています。

toioが届ける新しい楽しさ

―toio事業の展望についてのお話も伺っていきたいと思いますが、その前に製品の概要と特徴について簡単にご紹介いただけますでしょうか?
toioは、本体セットとタイトルを組み合わせて遊んでいただくもので、本体セットは「コアキューブ」(キューブ)という四角いキューブ型ロボットが2つと、コントローラーが2つ、そしてコンソールで構成されています。このコンソールにカートリッジを差し込んで遊ぶというものです。
カートリッジ次第で違うゲームができて、かつ、実世界で色々な遊びが実現できるように専用のマットを使ったマップ、フィールドがあって、そこにある特殊な印刷パターンを読み取りセンサーで読み取って、キューブが自分の位置を正確に把握できる仕様です。

このキューブの上に乗せるもの次第でキャラクターが変わるので、そのキャラクター性を生かしたタイトルがあったり、工作したものを乗せて相撲ゲームができたり、色々な遊びが作れる、と。2台のキューブの位置を把握することによって、例えば相撲ゲームで勝敗が分かったり、プログラムを覚えさせて正確に動かしたりできる、というものになっています。

プログラミングができる環境、ツールも用意しているので、遊ぶだけじゃなくて、動き自体を考えて作る楽しみもある、というところですね。

―リアルな手触りとテクノロジーが融合している新体験のプロダクトだと思うのですが、着想はどこから生まれたものだったんですか?
私とアレクシーが研究所で研究していた頃、「自分が作ったものが動きだしたり、自分が作った世界の中に入って遊べたら楽しいよね」と。大の大人が言っているのもあれですけど(笑)。
例えば、おもちゃが動き出す映画がありますが、それみたいな体験ができたら面白いな、と話していました。それを真面目に、技術を突っ込んでやってみた、っていうのが最初の発端です。

あとは、もう1つあるとすれば、私自身が学生時代に色々なロボットコンテストに出ていて、ロボコン的な体験が身近にできたら面白いな、と。エンジニア同士が集まってスポーツ大会に出るような感覚でロボコンに出ていたので、その頃の勝った負けたで熱中していた、という体験からも影響を受けていると思います。

―開発者として特にこだわっているポイントについても教えていただきたいです。
一番重要視しているのは、やっぱりキューブの上に乗せたモノが主役ということです。
キューブだけ見るとシンプル過ぎて、「これロボットなんですか?」って誤解を与えるんですけど、上に乗せたものが目立つように、ロボット自体はあえてシンプルで目立たない形にしています。

子供にとっては自分で作ったモノには愛着と絆があって、外から見る以上にすごく深い意味があるんじゃないかな、ということを強く意識していて。主役であるモノを作って、乗せてもらうということは重視しています。

もちろんこの中には、他にもすごい技術やこだわりもたくさん詰まっているんですけど、あくまでそれは引き立て役ですね。
例えば、ロボットの動きも、自然で違和感がないレベルに落とし込んでいるのと、重たい物も乗せることが出来て、子供がパッと作りそうなモノは大体動く、色々なモノを乗せてもちゃんと動くようにこだわって作っています。

―今後どのような方針で拡大されていくのかも教えていただけますでしょうか?
やはりまずは、エンタテインメントを作っている会社なので、プレイステーションに続いてtoioも新しいインタラクティブエンタテインメント、新しいあそびを作りたい、という気持ちは強いです。同時に「プログラミングも遊びになる」というキャッチコピーを書いたりしているんですが、動きを作ったり形を作ったり、作ること自体の楽しさいもあるので、あそびの軸はしっかりと持ちながら、「遊ぶ楽しさの中にある、作る・プログラミングする楽しさ」を広めていきたいと思っています。

それもあって、最近プログラミング教室や、色々な教育関係の方からも連絡をいただくことが増えています。単純な勉強用途というよりは、「遊びながら、楽しみながら学ぶ」という要素を取り入れたいという声はたくさんいただきます。

昔から工作をしたり、山で木を取ってきて秘密基地を作って、とか色々やったと思うんですけど、そういう感覚とデジタルの感覚ってそんな離れている必要はないんじゃないかな、と。別に融合してもおかしくないし、そうするともっと楽しくなるっていうのはあってもいいな、という気持ちです。

―今後toioでチャレンジしたいことや作っていきたい未来像はどのように考えてますか?
プレイステーションで培った知見をもとに、子供たちにも楽しんでもらえるし、実世界の遊びにもなるんだよ、っていうところはもっと深く挑戦していきたいな、と思っています。コンピューターの中の世界で、ものすごい価値を創り出しているプロフェッショナルが周りにたくさんいるので。

あとはやっぱり個人的には、すごく面白くてエンタテインメントが好きな人たちと出会って楽しく仕事しているので、その楽しさをお客さんにたくさん届けたいな、というのが一番ですね。

社内起業家としての働き方

―これまで大きな組織の中の新規事業として推進してくる中で、苦労したエピソードを教えていただきたいです。
苦労したことと楽できたことが裏返しなので、変な言い方になるかもしれないですけど。
「会社の中にも色々な知らないルールっていっぱいあるんだな」と感じることがたくさんありました。「この会社ってこういうルールで動いていたんだ」という。あとは全然知らない専門部署もたくさんあって、そこを巻き込んで進めないと事業が成り立たない、っていうのは苦労しつつ発見があった点でした。
裏返しという意味では、逆に言うと身近にそういうプロたちがいっぱいいて。
例えば法律についても、いきなり弁護士を雇うではなく、法務の誰々さんに聞けばいい。そういった「とりあえず聞きに行ける人」がいるっていうのはすごいありがたい事だなって思っていまして、「新しい事をちゃんとプロジェクトとしてやっている」ってことを伝えれば、相談に乗ってくれるし、中にはものすごく積極的に最初からいた仲間みたいにアドバイスくれる人もいっぱいいて。
全社に貢献する役割と意識を持った専門家が身近にたくさんいて、その力を借りられるのは、とてもありがたいことだと思います。

―他の部署を巻き込むのに苦労するっていうケースもよく聞くんですけど、そのあたりのハードルはなかったですか?
おそらく昔はあったと思いますが、SAPで新規事業をある種制度化して社長直轄プロジェクトとしてやります、というコンセンサスができていたので、すごく話しやすくなりましたし、ある程度会社としての共通言語はある中で話せるので、相談しやすい環境ですね。

―SAPの制度設計もうまく機能しているんですね。
構想から発表まで、とてもスムーズに進めてこられた印象があるのですが、工夫した部分や上手く進めるポイントは何だったんでしょうか?
今も変わらないんですけど、人に丸投げせずに、「自分たちで手を動かす」っていうことにこだわってやっていました。プロトタイプを作ってユーザーテストするのもできるだけ自分たちが実体験をもってやるということ。やっぱり本当の現場には濃い情報があって、誰かを経由して「子供が面白いって言ってたよ」って言われるのと、直接顔を見るのでは全然違います。
特に最初の頃の、アイデアがどっちに行ったらいいのか自信がなくてふらふらする時期に、そのあたりのちょっとした反応の違いを意識して進めたのはすごく大事だったと思います。

―当事者として現場のリアルも知るということですね。
そうですね。
あともう1個こだわっているのは、「自分が使いたくなる製品を作る」っていうことです。似たことをやっている友達とか仲間の間でもよくそういう話になるんですけど、「自分が使いたくなる製品」か「自分がものすごく届けたい人がいて、その人に届けるプレゼント」か、のどちらかじゃないと上手くいかないんじゃないんか、と思っています。そのどちらか、もしくは両方で事業なり製品を作るっていうことにはこだわっています。

―toioは自分でも使いたいものですか?
やっぱり自分でも使いたいですし自分の子どもとも遊んでいます!
自分が使いたくないものは人に売るわけにいきませんし。仮に届けたい方が自分とは距離のあるユーザーでも、その方にもすごく共感して届けたい。

僕もいま7歳と4歳の子供がいて特に上の子とはプログラミングも含めて一緒に遊んだりもするんですけど、自分にとってすごく明確で具体的な「この人」っていうのが見えていると、ブレないで作れるかなと思います。

実はスタンフォード大学に留学していた時に、デザイン系の授業の中で、誰かにプレゼントを作る「プレゼント体験」のワークショップがあって、そこでもまさにそういう話をされていたんです。「プレゼントしたくなるものが本当に届けたいものだし、それが製品のアイデア、物作りの考え方」っていう授業になっているくらい誰かが確立している話なのかもしれませんが、それは本当にそうだな、と思ってます。

―今もプロジェクトリーダーとして先頭に立っていると思いますが、日々どんな心境で働いてますか?
もう楽しいですね!
当然、「たくさんの人の製品をお届けして、それをもっと楽しんでもらいたい、どんどんネタ作らないとな」っていう意味のプレッシャーはありますけど、それはポジティブな意味で。
あとは、だいぶ人も増えてきて役割分担も出来てきたので、僕自身はもう少し商品のそのものの商品企画にフォーカスして仕事がしやすくなってきました。

―田中さんのそのモチベーションはどんなところからきていらっしゃるんですか?
僕自身のモチベーションとしては、自分自身で作った製品がたくさんの人の手元で動いているっていうことを、やっぱり一つ実現したいという思いがあります。エンジニア魂みたいな(笑)。
まだ世にないけれども、自分としては「絶対これ面白い!」と思って作ったものを、たくさんの人が使っている、使い続けてもらう、っていう状態が自分としては1つのゴールです。

そういう意味では、僕個人としては研究所の中で研究した後は誰かに任せるというよりも「お届けするためには事業化、製品化して自分でやりきらなきゃいけないな」っていう思いが強いですし、それが自分のスタイルなのかもしれません。そういうことをやりきって、お子さんたちが楽しんでくれてるっていうのがモチベーションでやってます。

社内起業家へのメッセージ

―最後に、日々奮闘されている社内起業家、新規事業担当の皆さんに対する応援のメッセージ、アドバイスを頂戴できればと思います。
逆説的なメッセージになるんですけが、暗闇は一生晴れないと思います(笑)。

というのは半分冗談ですけど、本当だと思います。でも暗闇と上手に付き合って目が慣れてくると、周りの状況が見えてきて色々な仮説が立てられる。そういった仮設に沿って、止まらずに前に進んでみることが大切と考えています。

そして、これは自分のバックグラウンドからくる突飛な話かもしれませんが、個人的には、ロボット工学を学ぶ中で知った知見として”アクティブセンシング”という概念がありまして、これが特に大切だと思っています。
これは、ちょうど「棒で先をつつきながら手探りで歩いたり、懐中電灯で照らしながら歩く」ようなもので、いきなり歩みを進めて全体が穴に落ちたり壁にぶつかったりする前に、とにかくできるだけちょっとでも先の方に手を伸ばしたり、先が見えるようにする水先案内が大切、という考え方です。例えば、誰かと話をしてみるとか、簡単な道具で調べてみるとか、少しでも先回りした行動や実験によって、いきなり一つの可能性に大博打を打つのではなく、仮説を高速に検証しながら歩みを進めていくというのが大切だと考えています。

あとは、ゲーム感覚にしちゃうっていうのが一番だと思うんですけど、自分で小さなゴールなり、ご褒美なりをたくさん設定して、一つずつの達成をちゃんと喜ぶというか。ちゃんと大きなゴールを見据えながらも小さな達成感も味わって自信を深めれば、そのうちやりたいことも出来るんじゃないのかなというのは、自分も信じながらやってます。自分に言っているようなものなんですけども(笑)。

そうやって、まだまだこれから大きな目標に向かっていきたいなと思ってます。

編集後記

取材時に、田中さん自身で作ったtoioに乗せて遊ぶおもちゃがたくさん入ったお道具箱を見せてもらい、それらを子供のようなキラキラした目で楽しそうに自慢げに紹介する田中さんの姿がとても印象的でした。

「”自分が使いたくなる製品” か “自分がものすごく届けたい人がいて、その人に届けるプレゼント” を作る」 という考え方は、すべての新しいサービス・プロダクトを考える上で、とても大事なメッセージだと思いました。

自分自身が一番楽しみながら次世代のワクワクする遊びを作っていく田中さんとtoio事業に、今後も注目していきたいと思います。


(取材/編集/構成:加藤 隼、撮影:川上 裕太郎、デザイン:古川 央士)

2019-05-22|
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