【LIFULL senior】社内新規事業から業界最大級のサービスになるまでの軌跡

〈プロフィール〉
株式会社LIFULL senior
代表取締役 泉 雅人 氏

2002年に大学卒業後、様々な業界とキャリアを経て、2010年に株式会社ネクスト(現株式会社LIFULL)に中途入社。
入社後は新規事業であった介護事業に携わり、事業立上げの前任者から引き継いで事業の成長を牽引。
2015年の分社化にともなって、株式会社LIFULL seniorの代表取締役に就任。
LIFULLグループの新規事業提案制度「SWITCH」の社内アクセラレーターも務めるなど、グループ全体の新規事業創出にも貢献。

目次

社長になることを目指したキャリア設計

―まずは泉さん自身のキャリア・経歴についてお伺いしたいと思います。LIFULL社へ入社するまでの経緯とキャリア選択について教えてください。
大学を卒業して仕事を選ぶときに、将来何をやるのか考えた時、どうせ仕事をするなら「自分で事業を作って世の中に価値を生み出せる社長になりたい」と漠然と思ったんです。その上で逆算をしたときに、商売の基本はお金を稼ぐことだろうなと思い、営業の仕事がいいだろうと。その中でもハードで、かつ新しいことに取り組んでいるチームで働ける環境が良いとなって、最初の仕事を選びました。

―戦略的な選択ですね。その後のキャリアについても教えてください。
1社目で営業の基本・イロハを学ぶことが出来て、次にリクルートで働きました。変わらず「自分で起業・独立したい」という思いから、様々な業界のことを知ることができる仕事としてアントレ(独立情報メディア)事業に携わりました。アントレでは、いろいろな中小企業の経営者を相手に商談をしていく中で「経営者の方々が何を考えているのか」「その業界の収益がどのように作られているのか」を深く知り、刺激をもらいながら仕事が出来ました。

その後、「どのような業界や領域でキャリアを作るべきか」を考え始めた頃が、ちょうどGoogleやAmazonを中心とした「インターネットビジネスがすごい」と日本でも言われ始めていた時期で、「インターネット業界に関わらないと人生損をしそうだ」と思い、立ち上がったばかりで社員も数人のWeb系ベンチャーにいきました。

―リクルートのような大きな会社からベンチャーにいくことは、特に当時は異質なチャレンジと思われませんでしたか?
そうですね。でも、自分でやりたいことだったし、それが実現出来るなら大胆に選ぶ性格なんだと思います。

それまでは営業しかやってこなかったのですが、その会社では、Webサービスがゼロからどう立ち上がっていくのか、どうマネタイズするのか、という一連の流れを経験できましたし、いろいろな職種の人と働くのがはじめての経験でした。
自分でやれることは全部やらなければいけないし、必然的に他の職種の人と接するので、エンジニアやマーケティングの仕事にも興味を持つようになり、見たり聞いたりする中で覚えていって、いつのまにか全部がある程度分かるようになったんです。

LIFULL入社後、すぐに新規事業の立ち上げフェーズに関わる

―その後にLIFULL社(当時のネクスト社)に入社されたと思うのですが、どのような思いで入社されたのでしょうか?
自分の残りの人生の時間を使って仕事をするなら「人の役に立つことに時間を使いたい」と思っていたときに、社長の井上が目指しているビジョン、また、働く人たちの本気度を感じてLIFULLへの入社を決めました。
基幹事業のHOME’S(現 LIFULL HOME’S)があり、新規領域にも積極的に取り組んでいて、大きなビジョンを本気で実現しようとしていたのが、当時の自分にぴったりでした。

―LIFULL社では新規事業開発の部署に配属されたとのことですが、入社当時のミッションはどのようなものだったのでしょうか?
すでにいくつかの領域で新規事業をやっていた中で、立ち上がって1年ちょっとくらいの介護領域サービスの事業で人が足りず、「手伝ってほしい」というオファーで関わり始めました。
その事業を立ち上げた前任者がいて、僕が2人目で入ったのですが、その方が残念ながら体調不良で休職されることになり、すぐに引き継ぐことになったんですよ。一緒に働いたのは数日間でした。

―すごい状況ですね!どのような心境でしたか?
Webサービスを伸ばすプロセスは知っていて、経験もあったので、やれる自信はありました。
しかし業界のことは何も分からない状態からスタートしたので、必死にお客さんのところに通って教えてもらい、業界の全体感を掴んでいきました。

―すでに立ち上がった事業を引き継いで育てていくからこその苦労などはありましたでしょうか?
最初こそ戸惑いはありましたが、分かってしまえば抵抗感はなかったです。
特に新規事業周りは人数も少なかったこともあり、担当している人を信頼してくれて、意思決定も任せてくれる雰囲気があり、ネガティブな状況ではなかったと思います。

―今でこそ、LIFULL介護は業界最大級のサイトになっていますが、そこに至るまでの苦労や、ターニングポイントがあれば教えていただきたいです。
実は、ローンチするタイミングでは先行していた会社が2社あって、介護メディアとしては圧倒的な3番手だったんですよ。
掲載数でいくと当時10倍くらいの差があって、しかも向こうは、そこそこの人数も揃えて全国で一気に拡げて、という状況。対する私は1人ですからね(笑)。

どうやったらひっくり返せるかな、ということはすごく考えて。1社で、しかも1人でやっても勝てないので、今も協力してもらっている外部パートナーと協力関係を結ばせてもらって、掲載数でいうと一気に10倍の企業に追いついた、という経緯です。

分社化による事業運営と責任の変化

―2015年にLIFULL senior社として分社化してそのまま代表に就任されていますが、分社化にいたった経緯や判断についてお話しいただきたいです。
LIFULL全体の話になるのですが、社長の井上が「100人の経営者をLIFULLから育てたい」という意思を持っていて、経営者を育てるためには座学で勉強をしてもだめで「自分でやって経験するしかない」と。

その流れで私の事業を含めたいくつかの事業を切り出して子会社化することになり、「泉、やってみなさい!」という指示が突然きたんです。
確か2015年の3月中旬ころに言われて、7月に分社化したので 3ヶ月くらいしかなかったんですけどね(笑)。

―事業自体も大きくしたい、という思いと、経営人材も育てたいという思いの、2つの目的で、というような?
そうですね。私としても「自分で意思決定することで力がつく」というのが持論だったので、実際やってみてそうだったと思います。

―分社化した中でも規模も大きく、おそらくプレッシャーも大きかったのではないかと思いますが、そのあたりはいかがでしたか?
不謹慎なのですが、プレッシャーはほとんどなかったんですよね。今までと環境が変わるので、むしろワクワクしていると。
ただ、会社設立の一連の流れはすべてやったことがなかったですし、他にも初めての経験は多かったんだったんですけど、そういうのが、私には合っていたんだと思います。

―代表に就任されて、どのような心境の変化がありましたでしょうか?
責任はすごく感じるようになりましたね。事業部だった時は自分も大きな会社に雇われているなかの一人で、メンバーも同じなんですよ。今は自分が経営者で、メンバー本人やご家族の生活もありますし、そこはもう責任があってピリピリっとします。
かつ、分社化してからどんどん新しい仲間を増やしていったんですけど、みんな最後は僕の言葉を信じて一緒に働きたいと言ってくれた大切な仲間なので、そこに関してちゃんと向き合って応えなきゃなという思いでいっぱいですね。

―分社化によって、事業運営や組織の面で変わったことはどんなことがありましたでしょうか?
僕が感じたというよりはメンバーが言うことには、「何かが決まって進んでくスピードがめちゃくちゃ早いですね」と。大きな組織体だと、やはり手順を踏んでやってくのですが、よほど大きな意思決定ではないかぎり全部私が出来るので、メンバーが「どうですか?」ってきて、「いいじゃんやりなよ」と、徒歩10秒で来て会話して、5分以内に意思決定するということがよくあります。

他にも自分たちで作った利益で社員旅行を企画して実行するなど、大所帯では難しいチームビルディングも自分たちの意思で実施しています。

―子会社として権限委譲もされて、自由度がとても高いように聞こえるのですが、逆に大企業のグループ会社だからこそのやりづらさを感じることはありますか?
親会社は上場していますし、グループ連結での利益計画もあり、細かい数値の報告義務などはありますね。またもちろん全てを私が決められるわけではないので、大方針などは然るべき意思決定機関で承認を取る必要があったりもします。

ただ、使える環境は上手く使えているという感じです。会社の規模的には小さいのに、LIFULLグループとして取引してもらえることでとてもいい条件でお願いできたり、生まれたてのベンチャーでは知りえないレベルの情報をもらえたりするので、そういう部分では大きな力になったりしますね。

社内起業家としてのグループ全体への貢献

―LIFULL senior社の中で、他にもサービスを立ち上げてらっしゃると思うのですが、どのような経緯で生まれたものなのですか?
「みんなの遺品整理」はLIFULLグループの新規事業提案制度「SWITCH」から生まれました。

―LIFULL senior社で扱うことを前提として出てきた案だったんですか?
実は提案したメンバーはもともと別の子会社にいたんですよ。そのまま出向で来てるんですけど。

僕もアクセラレーターとして事業プランを一緒に考えて「SWITCH」で受賞して、そのまま「泉さんのところでやりたい」と言ってくれて、一緒に事業を作りました。LIFULL seniorの中でプロダクトを作れる体制も整えていましたし、「これは即立ち上げられるな」という目算もあって。

―「SWITCH」のピッチの前段階から泉さんが壁打ちもされていたのですか?
そうですね。「SWITCH」にはアクセラレート制度というものがありまして、提案の素案があがってくる段階では、やっぱり全員プロフェッショナルではないので、「どうやったらもっと良い事業になるのかな」ということをお手伝いする人たちが何人かいるんですね。僕もそのうちの一人で、LIFULL seniorの仕事をしながら、それとは関係のない色々な事業をお手伝いしたりもします。

―かなりコミットが深いですね!
私個人としては何かの見返りはないんですけどね(笑)。
その活動は私自身の評価対象ですらないですが、「LIFULLがグループとしてもっと伸びていくためには」という視点でやっているので、いろんな相談がいろんな人から来ますけども、時間が許す限りは話したりアドバイスをしたり、一緒に考えたりということはやっています。

若い人たちが「俺も、私もああいうふうに出来るんだ」って思ってくれないと、後に続くものは出てこないと思っているので。自分が今やっているLIFULL seniorがモデルケースになったらいいかなという思いがあります。
やっぱりいきなり一人で事業は出来ないので、「こんなアイデアあるんですけどどうしたらいいですか?」と話しかけてくれたら、出来る限りの知恵と経験をその人たちに渡して助けたいな、とは思っています。

―完全にロールモデルになってますね!
そうなれるように努力はしてますね。

もちろん自分の子会社のことは考えなきゃいけないのですが、LIFULLグループ全体がやろうとしているものの中の一つを任せてもらっていると思うので、何かしら力になれればなと思います。

―LIFULLグループでは「SWITCH」から実際に様々な事業が生み出されてるイメージがあるのですが、応募自体も活発なのでしょうか?
年間で100件弱くらいですかね。従業員の数で考えると、全体の10〜20%は応募に関わっているんじゃないかなと思います。

―LIFULL senior社自体もイノベーティブな組織の印象が強いですが、代表として工夫しているポイントはありますか?
やはり背中を見て働いていると思うので、僕自身がやり続けてないと、誰も乗って来ないだろうとは思ってますね。LIFULLの新規事業の手伝いなどもしますが、それも口だけで終わってしまうのではなく、新しいものを生み出すために自分でも挑戦し続ける姿勢を示そうかなと思ってやっています。
仕事もそうですし、プライベートでもいきなりフルマラソンに出場するとか、山に登るとか日々挑戦ですね(笑)。

そういった、何かに立ち向かう、チャレンジする、といった姿は意識的に見せています。

LIFULL seniorとして目指す世界

―今後LIFULL senior社として目指していく場所、展望を教えていただきたいです。
介護に関わる課題は、とても複雑で多岐に渡る中で、僕たちが今やれているのって、ほんの一部だと思うんですよね。目指す世界は「シニアの暮らしに関わる全ての人々が笑顔あふれる社会の仕組みを創る」ことです。介護から始まり、そこに関わる人の課題を解決しているんですが、サービスを提供している事業者側にもまだまだ課題はあるので、そこに対する提案もしていきたいと思っています。

あとは、自宅で介護を受けている方が沢山いるので、そこにも関わっていきたいなと思っています。ただ、これを自社だけでなんでもやろうとすると、時間がそんなにないと思うんですよ。残された時間で解決するためには、いろんな会社が知恵を出し合って協力しなければいけない、と思うので、さまざまな方々と一緒に取り組んで早く課題の解決することをやっていきたいと思っています。
その結果として、僕たちもビジネスとして成長できれば良いと思っています。

―手法としてはオープンイノベーションや他社と協業という形ですか?
他社と協業はありえるかなと話してます。本当の意味での課題解決を思うと、自社にこだわらなくてもいいですよねと。この領域で思いを強く持って仕事をされている方はたくさんいるので、考え方が合う人達と一緒にやりたいと思っています。

―強い思いを持っている人たちが沢山いそうな領域ですよね。
そうですね。僕たちの強みも「ビジョンを軸にした強い思い」だと思ってますので。

この事業を立ち上げた前任者の話をすると、その方が自分の祖母の介護施設を探すことになったことがきっかけでして。10年前はネットには何も介護の情報がなく、必死に駆け回って情報を手に入れ、1件ずつ聞いて、ようやく集めた情報を自分で整理し比較し、なんとか探せたと。
そんな情報の非対称性がある領域ならば、自らがその課題を解消すべきだ、という原体験に基づいて立ち上げた事業なので、自分たちが当事者として経験したことに対して、「これはまずい、解決しなきゃ」と思えているところが強いのかもしれないですね。
僕はその思いを引き継いで、形にして、大きくしようと思っています。

社内起業家へのメッセージ

―最後に、日々奮闘している社内起業家の方々へメッセージ、応援のアドバイスを頂戴できればと思います。
上から目線で言うのは嫌なので、経験のシェアという意味でお話させていただきます。

まずは、もちろん既存事業も大変で、そういう人たちがいるからこそチャレンジできる新規事業なので、既存事業で頑張ってる方への感謝はし続けるべきだと思いますし、僕自身も忘れたことがないです。

その上で、新規事業って、どこにどう進んだらいいか道がある程度想像できる状態で進む仕事とは全然違うと思うんですよ。基本的には真っ暗闇で街灯一本もないところ。それって相当心細いと思うんですけど、だからこそ信頼できる仲間としっかり手を取り合って、「これを成し遂げるんだ!」という目指したい世界観を共有し、共にその暗闇を進んでいく。そこには相当な覚悟と努力は必要かもしれないですが、新しい道が出来て事業が立ち上がった瞬間は、何物にも代えがたい喜びがあると思います。

それを見た若い人には、自分も続こうと思って欲しいし、次の世代に事業を通して価値を残せるだろうし。その取り組み自体が次に続く人たちの心を後押しする、勇気になる、すごく意義のある挑戦をしてるんじゃないかなと思います。
新規事業に関わる皆さんは大変なことが多いと思うんですけど、そういうことをやってるんだなと思うと、そんな状況でも頑張れるんじゃないかなと思います。

あとは、本当に暗闇なので、楽しまないとやってられないですよね(笑)。

―泉さんはとても楽しみながら働いてそうに見えます!
一個だけ自慢なんですけど、LIFULLに来てから「会社行きたくないなあ」と思った日がなくてですね。前日に飲みすぎて頭が痛くて辛いなはありますけど(笑)。

小さな事業を自分がここまで大きくしてきたという愛着もありますし、今でも毎日課題や困難ばかりですけど、「よっしゃ、なんとかしてやろう」という思いで出社して、完全に自分ごと化して当事者として進んで考えて動けているので、楽しめているし、前向きに頑張ることが出来ているのかなと思います。

編集後記

インタビュー取材中、終始目をキラキラさせながら、事業のこと、社員のこと、介護業界の未来のことを語っていた姿がとても印象的でした。
「LIFULL介護」を社内新規事業の段階から業界最大級のサービスに育てた今でも、業界をより良くすることを目指してチャレンジを続け、若い世代の新規事業創出支援にもフルコミットする泉社長の姿は、まさに社内起業家のロールモデルと言えると思います。

業界の課題に対して真摯に取り組み、新しいチャレンジを続けるLIFULL senior社と泉社長に、今後も注目していきたいと思います。

 

(取材/編集/構成:加藤 隼、撮影/デザイン:古川 央士)

2019-05-22|
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